DC掛金を給与から控除できる根拠
賃金全額払いの原則
労働基準法第24条には「賃金全額払いの原則」が定められています。「賃金全額払いの原則」とは、使用者が労働者に賃金の全額を支払わなければならないという原則です。
労働者の生活の安定を図るためには、賃金の分割払いや支払留保、一方的な相殺などをしてはいけない、ということです。ただし、法令に別段の定めがある場合や、寮費や組合費などの控除について労使協定がある場合には、例外として賃金の一部を控除して支払うことができることになっています。
法令に別段の定めがある場合 とは
例えば、所得税の源泉徴収や社会保険料の控除は「法令に別段の定め」があるため、特に何らの手続きをすることなくこれらの金額を賃金から控除することができます。
所得税法の規定(税金)
第183条(源泉徴収義務)
1 居住者に対し国内において第28条第1項(給与所得)に規定する給与等の支払をする者は、その支払の際、その給与等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならない。
(以下略)
第28条(給与所得)
1 給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。
(以下略)
厚生年金保険法の規定(社会保険)
第84条(保険料の源泉控除)
1 事業主は、被保険者に対して通貨をもつて報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料(被保険者がその事業所又は船舶に使用されなくなつた場合においては、前月及びその月の標準報酬月額に係る保険料)を報酬から控除することができる。
2 事業主は、被保険者に対して通貨をもつて賞与を支払う場合においては、被保険者の負担すべき標準賞与額に係る保険料に相当する額を当該賞与から控除することができる。
(以下略)
確定拠出年金法の規定
確定拠出年金法には、税金や社会保険料と同様に「法令に別段の定め」が規定されています。
企業型年金加入者掛金
企業型DCでマッチング拠出を行う場合、従業員(役員を含む)が自分の給与の中から拠出するマッチング部分(加入者掛金)は給与から控除し、事業主掛金と合わせて事業主が納付することになります。
第21条の3(企業型年金加入者掛金の源泉控除)
1 前条第1項の規定により企業型年金加入者掛金の納付を行う事業主は、当該企業型年金加入者に対して通貨をもって給与を支払う場合においては、企業型年金加入者掛金を給与から控除することができる。
(以下略)
個人型年金加入者掛金
「iDeCo+」(イデコプラス・中小事業主掛金納付制度)は、企業年金を実施していない従業員300人以下の中小企業の事業主が、個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入している従業員の掛金に上乗せして、掛金を拠出できる制度です。
この制度では、事業主掛金と加入者掛金を事業主がとりまとめて納付するため、従業員(役員を含む)が自分の給与の中から拠出する部分(加入者掛金=iDeCoの部分)を給与から控除し、事業主掛金と合わせて事業主が納付することになります
第71条(個人型年金加入者掛金の源泉控除)
1 第70条第2項の規定により個人型年金加入者掛金の納付を行う厚生年金適用事業所の事業主は、第2号加入者【従業員(役員を含む)】に対して通貨をもって給与を支払う場合においては、個人型年金加入者掛金を給与から控除することができる。
(以下略)