インフレで目減りする退職金。中退共を「とりあえず継続」するリスクとは?

 物価の上昇が続く今、これまで「当たり前」だった会社の退職金制度が、実は社員の将来を脅かすリスクになっているかもしれません。
 本記事では、長年親しまれてきた「中退共(中小企業退職金共済)」と、現代の新しい仕組みである「企業型DC(企業型確定拠出年金)」を比較しながら、会社と社員の双方が得をする賢いお金の守り方を解説します。
 時代の変化に合わせた退職金の見直しについて、一緒に考えていきましょう。

その退職金制度、時代に合っていますか?

 「中退共(中小企業退職金共済)」は、長年にわたり日本の中小企業の成長と社員の生活を支えてきた非常に素晴らしい制度です。しかし、私たちが生きる今の時代は、この制度が作られた頃とは大きく状況が変わっています。

 かつての日本は、一つの会社で定年まで勤め上げる「終身雇用」が当たり前で、物価も安定していました。
 しかし現在は、自分のスキルを活かして転職する「ジョブ型雇用」が広がり、さらに「物価上昇(インフレ)」によって、お金そのものの価値が目減りしていく時代へと突入しています。

 このような大きな変化の中では、これまでのやり方を「とりあえず継続する」こと自体が、実は大きなリスクになりかねません。経営者の方の中には「昔からの付き合いだから…」と、慣習で制度を続けている方もいらっしゃるでしょう。
 しかし、その何気ない継続が、大切に育ててきた社員の将来を縛り、老後の資金を実質的に減らしてしまっている可能性があるのです。
 今こそ、目の前の制度が「今の社員」や「これからの時代」に本当に合っているのか、立ち止まって確認する時期が来ています。

中退共を継続する「隠れたデメリット」とは

 「国が関わっている制度だから安心だ」と思われがちな中退共ですが、実は今の経済状況下では、社員の資産を守りきれないという「脆さ」を抱えています。

 最大の懸念は、最近の急激な物価上昇です。
 ここ数年、日本の物価上昇率は「3.0%」を超える月も珍しくなくなりました。一方で、中退共でお金が増える割合(予定利率)は、現在その多くが「1.0%程度」にとどまっています。

 例えば、100万円を預けて1%増えたとしても101万円ですが、世の中の物価が3%上がっていれば、かつて100万円で買えたものは103万円出さないと買えません。
 つまり、通帳の数字は増えていても、買えるものはどんどん減っている、すなわち退職金が「実質的に目減りしている」という事態が起きているのです。

 かつてのような物価が上がらない時代であれば、1.0%の運用でも「貯金よりマシ」だったかもしれません。
 しかし、これほど物価が上がる局面では、固定された低い利率のまま積み立てを続けることは、社員が将来受け取る「豊かさ」を削っているのと同じことになってしまいます。
 この「インフレによる資産の目減り」こそが、中退共を惰性で続けることの最も深刻なデメリットといえます。

企業型DCがもたらす「圧倒的な経営メリット」

 そこで注目されているのが「企業型DC(企業型確定拠出年金)」です。この制度は、会社にとっても社員にとっても、税制面で驚くほど有利な仕組みになっています。

 まず会社にとっての大きなメリットは、法人税の軽減です。
 社員のために積み立てるお金は、すべて「経費(損金)」として認められます。会社の利益からこの積立分を差し引くことができるため、結果として会社が支払うべき法人税を大きく抑えることが可能になります。
 これは、会社のキャッシュフローを改善する有効な節税戦略となります。

 また、働く社員や役員にとっても、驚くほどの「増やす力」があります。
 通常、お給料をもらう際には所得税や住民税が引かれますが、企業型DCで積み立てるお金には、これらの税金が一切かかりません。

 例えば、本来なら税金で20%引かれて「80円」しか手元に残らないはずのお金が、まるまる「100円」投資に回せるということです。
 税金として消えていたはずのお金がそのまま運用に回るため、20年、30年と経った時の将来資産は、自分で貯金するのとは比べものにならないほど大きく膨らみます。
 会社が払う税金を減らしつつ、社員の将来のお金を最大化できる。これこそが、企業型DCが「選ばれる理由」なのです。

「選ばれる会社」になるための福利厚生戦略

 企業型DCの導入は、単なる節税対策だけでなく、良い人材を集め、育てるための「攻めの戦略」にもなります。

 まず、会社のイメージが格段に良くなります。
 「社員が自分でお金を守り、増やすためのサポートを全力でしている会社」という姿勢は、求職者や社員に対して、誠実で先進的な印象を強く与えます。
 社員から見ると、中退共は会社が勝手に積み立てており、今、どれだけの額が積みあがっているのかはわかりません。一方、企業型DCは、会社が自分の老後のためにいくら積み上げてくれているのかがわかるという「見える化」も特徴の一つです。
 これは、深刻な人手不足が続く中で、優秀な人材に「この会社なら安心して働ける」と思わせる強力な武器になります。

 また、制度を導入する際に行う「お金の勉強会(投資教育)」も大きな価値を生みます。
 これまで投資に触れてこなかった社員が、制度を通じて自分のお金について真剣に学ぶことで、「世の中の動きに敏感になり、自分で考えて行動する力」が養われます。
 この自立心の向上は、巡り巡って仕事に対する前向きな姿勢にもつながっていくはずです。

 さらに、現代の働き方に欠かせないのが「持ち運びやすさ(ポータビリティ)」です。
 今の若手社員は、将来のキャリアアップも視野に入れています。
 企業型DCは、転職先や個人の年金制度(iDeCo)に積み立てた資産をそのまま持ち運べます。この柔軟性があるからこそ、社員は今の会社での頑張りを無駄にすることなく、安心して働き続けることができるのです。

次世代のスタンダードへのシフト

 退職金制度の見直しは、単なる「経費の支払い」ではありません。それは、社員の将来を守り、会社の価値を高めるための「未来への投資」です。

 物価上昇でお金が目減りしていくのを放置せず、今の時代にふさわしい「会社も社員も手取りが増える」新しい仕組みへとアップデートしていきましょう。
 まずは今の制度との違いを詳しく知るために、一度オンラインで気軽にお話ししてみませんか?