パッシブ運用とアクティブ運用
投資信託における運用方法の類型の一つに、「パッシブ運用」と「アクティブ運用」があります。直訳をすればパッシブは「消極的」、アクティブは「積極的」となりますが、それぞれの性格の違いを理解した上で資産形成のための戦略を考えることが大事です。
目次
パッシブ運用とは
パッシブ運用の基本的な考え方
市場平均の収益率を目指す運用方法
パッシブ運用とは、市場平均の収益率を目指して投資を行う運用方法です。具体的には、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などの市場指標に連動する投資信託やETF(上場投資信託)を購入し、長期的に保有し続けることが基本的な戦略となります。
この運用方法の最大の特徴は、市場全体の動きに追随することを目指し、個別の銘柄選択や市場予測を行わないという点です。これは、効率的市場仮説という考え方に基づいています。この仮説では、市場には既に入手可能な情報が全て織り込まれているため、継続的に市場平均を上回る運用成績を上げることは極めて困難だと考えます。
パッシブ運用では、運用担当者による積極的な投資判断が不要なため、運用コストを大幅に抑えることができます。これにより、投資家が得られる実質的な収益率を高めることが可能となります。
パッシブ運用のメリットと実践方法
パッシブ運用のメリット
パッシブ運用の最大のメリットは、運用コストの低さと透明性の高さです。アクティブ運用では、運用担当者の人件費や売買手数料などのコストが発生しますが、パッシブ運用では、これらのコストを最小限に抑えることができます。また、市場指標に連動することを目指すため、運用方針が明確で分かりやすいという特徴があります。
実践方法としては、まず自身の投資目的やリスク許容度に合わせて、投資対象とする市場(国内株式、先進国株式、新興国株式など)を選択します。次に、選択した市場に連動するインデックスファンドやETFの中から、信託報酬(運用手数料)が低く、純資産総額が大きい商品を選びます。
ドルコスト平均法のススメ
投資を始めたら、定期的に一定額を積み立てていく「ドルコスト平均法」の採用がお勧めです。市場の上下に一喜一憂することなく、長期的な視点で資産形成を続けることが、パッシブ運用成功の鍵となります。特に初心者の方には、この安定的で理解しやすい投資手法が適していると言えるでしょう。
アクティブ運用とは
アクティブ運用の基本的な考え方
市場平均を上回る収益を目指す
アクティブ運用とは、運用担当者の分析や判断に基づいて、市場平均を上回る収益率(超過収益)を目指す投資手法です。具体的には、企業の財務諸表分析、業界動向の調査、マクロ経済分析などを通じて、割安な銘柄や成長が期待される銘柄を発掘し、積極的な売買を行います。
この運用方法は、市場には非効率性が存在し、それを発見して活用することで超過収益を得られるという考えに基づいています。運用担当者は、企業訪問や独自の調査を通じて、市場参加者の大多数が見落としている投資機会を探します。また、景気動向や金利の変化など、マクロ経済環境の変化を予測し、資産配分を機動的に変更することも特徴です。
市場平均を上回る収益を目指す
ただし、このような積極的な運用を行うためには、高度な専門知識と豊富な経験、そして充実した調査体制が必要となります。そのため、個人投資家が直接アクティブ運用を行うのではなく、投資信託を通じてプロフェッショナルの運用担当者に運用を委託するのが一般的です。
アクティブ運用のメリット・デメリットと活用方法
アクティブ運用のメリット
アクティブ運用の最大のメリットは、市場環境が大きく変化する局面で柔軟な対応が可能な点です。例えば、バブル崩壊や金融危機など、市場全体が大きく下落するリスクが高まった際には、株式の組入比率を下げたり、防衛的な銘柄にシフトしたりすることで、損失を抑制できる可能性があります。また、新興国市場や特定のセクターなど、情報の非対称性が大きい市場では、綿密な調査に基づく銘柄選択が功を奏する機会も多くあります。
アクティブ運用のデメリット
一方で、デメリットとしては、運用コストの高さが挙げられます。運用担当者の人件費、調査費用、売買手数料などが必要となるため、信託報酬は必然的にパッシブ運用より高くなります。また、運用担当者の投資判断が市場の動きを正確に予測できるとは限らず、市場平均を下回る結果となるリスクもあります。
アクティブ運用に当たっての検討事項
アクティブ運用を活用する際は、運用担当者の実績や運用手法、投資哲学などを十分に吟味することが重要です。また、ポートフォリオ全体でみた場合、パッシブ運用とアクティブ運用を組み合わせることで、リスクの分散と収益機会の確保を両立させることも検討に値します。
金融庁によるアクティブ運用の評価
金融庁が公表している「資産運用業高度化プログレスレポート」によれば、アクティブ運用の投資信託について以下の問題点が指摘されています。
- パフォーマンスの低さ
アクティブ運用の公募投信の平均的なパフォーマンスは、信託報酬等のコストに見合う水準を確保できていないと考えられています。 - 高い費用
日本株のアクティブ運用投資信託の総経費率は1.52%で、パッシブ運用の投資信託の0.55%と比べて高くなっています。この高い費用がアクティブ運用のパフォーマンスに悪影響を与えている可能性があります。 - リスク調整後リターンの低さ
平均シャープレシオ(リスク調整後リターン)では、パッシブ運用の投資信託が0.40、アクティブ運用の投資信託が0.20と、アクティブ運用の投資信託が劣っています。 - 顧客の支持不足
上記の問題点により、アクティブ運用の投資信託は顧客の十分な支持を得られておらず、公募投信市場の純資産残高も伸び悩んでいます。
【出典】金融庁「「資産運用業高度化プログレスレポート2022」の公表について」