Q&A 退職一時金制度から企業型DCへの制度移行

 退職一時金制度から企業型確定拠出年金(企業型DC)への移行とは、企業が従業員の退職金制度を変更し、過去の積立資産を企業型DCに移換するプロセスのことです。
 移行は労使合意のもとで行われ、自己都合退職金額を基準とする金額を複数年に分割して企業型DCに移換されます。企業は移行により退職給付債務を減少させることができますが、その際にはキャッシュフローを用意することができるかの確認が必要です。

制度移行時の資産移換はどのタイミングで行えばよいのですか

 退職一時金制度から企業型DCへの資産移換は、必ずしも企業型DCの導入時に行う必要はなく、制度導入後にも個人勘定に移換することが認められています。(確定拠出年金Q&A No.167)

退職一時金制度から企業型確定拠出年金への移行について、具体的にはどのような手続きが必要ですか

 退職一時金制度から企業型確定拠出年金(企業型DC)への移行には、以下の具体的な手続きが必要です。

  1. 労使合意の形成
    経営側と従業員側で制度移行について合意を形成します。
  2. 退職金規程の改定
    既存の退職一時金制度を変更(減額または廃止)し、企業型DCへの移行を反映させます。
  3. 企業型DC規約の作成
    資産移換の方法や期間などを含む新規約を作成します。
  4. 移換額の算定
    一般的に、退職一時金制度の変更前後の自己都合要支給額の減少部分相当額を移換額とします。
  5. 分割移換計画の策定
    法令上、単年度での移換は認められておらず、移行日(退職給与規定の改正や廃止のあった日)が属する年度から起算して4年度以上8年度以内の期間に均等に分割して移換します。(確定拠出年金法施行令第22条①五)
  6. キャッシュフローの確認
    分割移換に伴う資金繰りを確認します。移行前に積立不足がある場合は、それを解消する必要があります。
  7. 従業員への説明
    新制度の内容や移行のスケジュールについて従業員に十分な説明を行います。
  8. 承認申請
    作成した規約を厚生労働大臣に提出し、承認を受けます。
  9. 制度の実施
    厚生労働大臣の承認後、計画に沿って資産の移換を開始し、新制度を運用します。

資産の移換額はどのように決められますか

 資産の移換額は、退職給与規程の改正や廃止前後の自己都合要支給額の差額の範囲内で決定されます。具体的には、労使合意に基づいて一定の規則により各人の移換額が定められます。(確定拠出年金法施行令第22条①五、確定拠出年金Q&A No.201)

分割して資産を移換している間に退職した従業員の未移換分はどのようになるのですか

 移換が完了する前に退職等により企業型DCの加入資格を喪失した場合、未移換分は一括して移換されます。
 これは、退職した従業員が持つ既得権を保護するための措置です。

移行について企業型年金規約にはどのようなことが記載されますか

 退職一時金制度から企業型DCへ移行する場合、企業型年金規約には以下の事項が記載されます。(確定拠出年金法施行令第3条①六、法令解釈第1.5)

  1. 移換元の制度が、退職一時金制度であること
  2. 資産の移換の対象となる企業型年金加入者の範囲
  3. 個人別管理資産に充てる移換額
  4. 通算加入者等期間に算入す べき期間の範囲
  5. 企業型年金への資産の受入れ期日
  6. 資産の 移換 を受ける最後の年度

DC制度に移行する場合、法人税法上はどのような扱いになりますか

 退職一時金制度から企業型DCへ制度移行するには、移行日(退職給与規定の改正や廃止のあった日)が属する年度から起算して4年度以上8年度以内の期間に均等に分割して移換しますが、確定拠出年金法に定められた金額については法人税法上も損金算入をすることができます。(法人税法施行令第135条三)