労働者派遣事業における欠格事由
法人(役員を含む)が欠格事由に該当する場合、労働者派遣事業の許可を受けることはできません。(労働者派遣法第6条)
主な欠格事由は以下に挙げるものになりますが、特に役員が該当していないか慎重に聴取する必要があります。
禁固以上の刑に処せられた者(すべての法律が対象)
- 役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいい、相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含みます。)が禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過していない者は欠格事由に該当します。
- 「禁錮以上の刑」とは、「禁錮」「懲役」「死刑」のことをいいます。(刑法第9条)
- 「禁錮」とは刑事施設に拘置すること(刑法第13条第2項)をいい、懲役とは刑事施設に拘置して所定の作業を行わせること(刑法第12条第2項)をいいます。
- 「執行を受けることがなくなった日」とは、「刑の時効の完成」「仮出獄を許された者の刑の残余期間の満了」その他の事由により刑の執行の免除を得たものをいいます。
- 刑の執行猶予の言渡しを受けた後、その言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過した者は、刑の「執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過していない場合」には該当せず、猶予期間を無事経過することによって直ちに欠格事由を離脱します。大赦又は特赦により刑の言渡しの効力を失った者についても同様です。

罰金の刑に処せられた者(一部の法律が対象)
- 罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過していない者は欠格事由に該当します。
- 「罰金」より軽い「拘留」(1日以上30日未満刑事施設に拘置する(刑法第16条))や「科料」(1,000円以上10,000円未満(刑法第17条))の場合は該当しません。
- 対象となる法律は以下の通りです。
法律の規定に違反した者
- 労働者派遣法
- 労働基準法第117条、第118条第1項(同法第6条及び第56条に係る部分に限る。)、第119条(同法第16条、第17条、第18条第1項及び第37条に係る部分に限る。)及び 第120条(同法第18条第7項及び第23条から第27条までに係る部分に限る。)並びに当該規定に係る同法第121条(これらの規定が労働者派遣法第44条(第4項を除く。)により適用される場合を含む。)
- 職業安定法第63条、第64条、第65条(第1号を除く。)及び第66条並びにこれらの規定に係る同法第67条
- 最低賃金法第40条及び同条に係る同法第42条
- 建設労働者の雇用の改善等に関する法律第49条、第50条及び第51条(第2号及び第3号を除く。)並びにこれらの規定に係る同法第52条
- 賃金の支払の確保等に関する法律第18条及び同条の規定に係る同法第20条
- 港湾労働法第48条、第49条(第1号を除く。)及び第51条(第2号及び第3号に係る部分に限る。)並びにこれらの規定に係る同法第52条
- 中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の改善の促進に関する法律第19条、第20条及び第21条(第3号を除く。)並びにこれらの規定に係る同法第22条
- 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第62条から第65条
- 林業労働力の確保の促進に関する法律第32条、第33条及び第34条(第3号を除く。)並びにこれらの規定に係る同法第35条
- 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律108条【実習監理者等による暴行、脅迫、監禁等禁止行為違反】、第109条【無許可の実習監理実施、虚偽等による許可(更新、変更)、監理団体の監理事業一部停止違反、名義貸しの禁止】、第110条(同法第44条の規定に係る部分に限る。)【秘密保持義務違反】、第111条(第1号を除く。)【監理団体の手数料・報酬受領、改善命令違反、違約金・損害賠償額予定違反、技能実習生の意思に反する旅券・在留カード保管、不当な技能実習生の私生活の自由制限禁止違反】及び第112条(第1号(同法第35条第1項の規定に係る部分に限る。)【報告徴収等拒否・虚偽等】及び第6号から第11号まで【監理団体の許可申請書等虚偽記載、変更届出不提出・虚偽提出、技能実習実施困難届出不提出・虚偽提出、事業の休廃止届出不提出・虚偽提出、監理責任者の設置違反、帳簿の備付け違反】に係る部分に限る。)の規定並びにこれらの規定に係る同法第113条【法人の両罰規定】の規定
- 労働者派遣法第44条第4項により適用される労働基準法第118条【中間搾取の排除違反、最低年齢違反、坑内労働の禁止違反、坑内業務の就業制限違反】、第119条及び第121条並びに労働者派遣法第45条第7項により適用される労働安全衛生法第119条及び第122条
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(第50条(第2号に係る部分に限る。)及び第52条を除く。)
- 健康保険法第208条、第213条の2又は第214条第1項
- 船員保険法第156条、第159条又は第160条第1項
- 労働者災害補償保険法第51条前段又は第54条第1項(第51条前段に係る部分に限る。)
- 厚生年金保険法第102条、第103条の2又は第104条第1項(第102条又は第103条の2に係る部分に限る。)
- 労働保険の保険料の徴収等に関する法律第46条前段又は第48条第1項(第46条前段に係る部分に限る。)
- 雇用保険法第83条又は第86条(第83条に係る部分に限る。)【被保険者に関する届出不提出・虚偽提出、不利益取扱いの禁止違反、報告等命令違反、証明書交付拒否、質問検査拒否等】
罪を犯した者
- 刑法第204条【傷害】、第206条【現場助勢】、第208条【暴行】、第208条の2【凶器準備集合及び結果】、第222条【脅迫】又は第247条【背任】
- 暴力行為等処罰に関する法律
- 出入国管理及び難民認定法第73条の2第1項【外国人に不法就労活動をさせた者】

その他(抜粋)
- 心身の故障により労働者派遣事業を適正に行うことができない者(精神の機能の障害により労働者派遣事業を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者)
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 過去に労働者派遣事業の取消し処分等に関して関与のあった一定の者
- 暴力団関係者 など