Q&A 企業型DCにおける死亡一時金

 「死亡一時金」は、確定拠出年金の給付の一つで、加入者等が死亡した場合に遺族が受けることができる給付です。

 死亡一時金に関する規定としては、確定拠出年金法第40条(支給要件)、第41条(遺族の範囲及び順位)、第42条(欠格)のほかに、給付額の算定方法に関する規定として、確定拠出年金法施行規則第4条(給付の額の算定方法の基準)などがあります。なお、個人型年金(iDeCo)の死亡一時金は、確定拠出年金法第73条により企業型年金に係る規定を準用することになります。

 確定拠出年金における死亡一時金は、加入者が死亡した場合にその遺族に支給される給付金です。受取人を事前に指定していない場合は、法定の順位に基づいて支給されます。(確定拠出年金法第41条①②)

  1. 配偶者(死亡の当時、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む)
  2. 死亡の当時、主として亡くなられた方の収入によって生計を維持されていた子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹
  3. 死亡の当時、主として亡くなられた方の収入によって生計を維持されていた2.以外の親族
  4. 死亡の当時、主として亡くなられた方の収入によって生計を維持されていなかった子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹

 「生計維持関係にある」とは、以下の2つの要件を満たしていることをいう。

  1. 生計同一要件
    ・住民票上同一世帯に属しているとき
    ・住民票上世帯を異にしているが、住所が住民票上同一であるとき
    ・住所が住民票上異なっているが、同居・家計を一にしている、又は経済的な援助が行われていると認められているとき
  2. 収入要件
    ・前年の収入(前年の収入が確定しない場合は、前々年の収入)が年額850万円未満であること
    ・年額850万円以上の収入はあるが、定年退職等の事情により、近い将来、収入が年額850万円未満になると認められること

 確定拠出年金法では、加入者はあらかじめ死亡一時金を受け取る者を指定することができます。(確定拠出年金法第41条①ただし書き)
 この指定は記録関連運営管理機関に対して行い、指定された遺族が優先して死亡一時金を受け取ることができます。指定できる範囲は配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む)、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹のみです。

 加入者が死亡した際、資産管理機関はその遺族に対して企業型記録関連運営管理機関の裁定に基づいて死亡一時金を支給します。この場合、個人別管理資産があることが要件となります。(確定拠出年金法第40条)

 なお、個人型年金(iDeCo)の場合は、国民年金基金連合会が死亡一時金を支給します。(確定拠出年金法第73条)

 死亡一時金の額は、請求日から3か月以内の企業型年金規約で定められた日における個人別管理資産の額です。(確定拠出年金法施行規則第4条②三)
 個人別管理資産は運用されており、どの時点で額を確定するかという問題が生じますが、この規定により、運用中の資産価値がどの時点で確定されるかが明確にされています。

 確定拠出年金法では、遺族が故意の犯罪行為で加入者を死亡させた場合や、先順位の遺族を死亡させた場合には、遺族間の不正防止を目的として死亡一時金を受け取る権利がないことが規定されています。(確定拠出年金法第42条)
 これは、遺族基礎年金など(国民年金法第71条)や遺族厚生年金(厚生年金保険法第76条)と同じ考え方によるものです。

 確定拠出年金の死亡一時金は、相続税の対象となります。
 死亡一時金は民法上の相続財産ではありませんが、税負担公平の見地から、税法上は「みなし相続財産」(退職手当等に含まれる給付)として相続税の対象となり、「法定相続人の数×500万円」が非課税枠として適用されます。
 なお、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定した死亡一時金のみが「みなし相続財産」該当します​​​​。