65歳以後の在職老齢年金の計算方法/在職定時改定(R4.4.1~)

概要

 65歳以上70歳未満の方が厚生年金保険の被保険者であるときに、65歳から支給される老齢厚生年金は、受給されている老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額に応じて年金額が支給停止となる場合があります。

 なお、平成19年4月以降に70歳に達した方が、70歳以降も厚生年金適用事業所に勤務されている場合は、厚生年金保険の被保険者ではありませんが、65歳以上の方と同様の在職中による支給停止が行われます。

用語

基本月額の定義/厚生年金基金に注意!

 まずは基本月額の定義です。65歳到達月の翌月分以降は、単純に報酬比例部分だけになります。基礎年金部分も含まれません。

 基本月額を計算するにあたりよくある誤りは、厚生年金基金からの年金支給額を含めていないケースがあります。厚生年金基金の加入の有無は年金証書により確認することができます。

 

 そもそも厚生年金基金は年金の3階部分に当たるはず。それなのに、なぜ厚生年金基金からの年金支給額が在職老齢年金の計算に出てくるかのカギは「代行部分」にあります。

 基金はもともと厚生年金として支給される報酬比例部分を代行して運用していました。最近は低金利時代となり思うような運用ができないこともあって大半の年金基金は代行を返上していますが、下図を見ても分かるように本来は年金機構が支払うべき金額を基金が代行して支払う場合は公平性の観点から在職老齢年金の計算の基礎(基本月額)としなければならないということです。

  なお、在職老齢年金の計算の結果、支給停止額が発生した場合は、まず年金機構が支払うべき老齢厚生年金から支給が停止されます。



計算方法

在職老齢年金による調整後の年金支給月額の計算式

基本月額と総報酬月額相当額との合計が47万円以下の場合 → 全額支給

基本月額と総報酬月額相当額との合計が47万円を超える場合
→ 基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)÷2

留意事項

  • 厚生年金基金に加入していた期間がある場合は、厚生年金基金に加入しなかったと仮定して計算した老齢厚生年金の年金額をもとに基本月額を算出します。
  • 厚生年金基金加入期間がある人の年金は、老齢厚生年金のうち報酬比例部分の一部が代行部分として厚生年金基金から支払われます。このため、在職老齢年金の停止額を計算するにあたっては、代行部分を国が支払うべき年金額とみなして、基本月額を算出します。
  • 年金支給月額がマイナスになる場合は、老齢厚生年金(加給年金額を含む)は全額支給停止となります。
  • 老齢基礎年金および経過的加算額は全額支給となります。
  • 70歳以上の方については、厚生年金保険の被保険者ではありませんので、保険料負担はありません。



支給停止期間や支給停止額の変更時期

支給停止期間

 基本月額と総報酬月額相当額の合計額が47万円を超えている期間

支給停止額の変更時期

総報酬月額相当額が変わった月または退職日の翌月(※)

 ※ 退職して1か月以内に再就職し、厚生年金保険に加入した場合を除く


<参考>
 平成24年の一元化法改正前は「資格喪失日」の翌月とされていました。

在職老齢年金を受けている方が退職したとき

 厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受けている70歳未満の方が、退職して1か月を経過したときは、退職した翌月分の年金額から見直されます。

  • 年金額の一部または全部支給停止がなくなり、全額支給されます。
  • 年金額に反映されていない退職までの厚生年金に加入していた期間を追加して、年金額の再計算が行われます。


注)

  • 退職して1か月以内に再就職し、厚生年金に加入したとき(転職など)は、引き続き在職老齢年金としての支払いが行われます。
  • 70歳以上の期間は、厚生年金に加入されていないため、年金額の再計算には反映しません。
  • 退職により厚生年金加入期間が20年を超えた場合、加給年金が支給される場合があります。その際は、別途、手続きが必要となります。



在職定時改定の導入

 老齢厚生年金の受給権を取得した後に就労した場合は、退職時や70歳到達時の資格喪失時に、受給権取得後の被保険者であった期間を加えて老齢厚生年金の額を改定しています。これを退職改定といいます。

 この制度を、2022(令和4)年4月1日からは65歳以上の者について在職中であっても年金額の改定を毎年1回定時に行うとする在職定時改定の制度を導入よう法改正がされます。高齢期の就労が拡大する中、就労を継続したことの効果を退職を待たずに早期に年金額に反映することで、年金を受給しながら働く在職受給権者の経済基盤の充実を図ることを目的としています。

 月額20万円で1年間就労した場合、在職定時改定により年間13,000円程度(月額1,100円程度)の年金が上積みされることになるようです。



在職老齢年金の支給停止の仕組み(日本年金機構パンフレット)

【出典】日本年金機構パンフレット