年金の繰上げ 1月当たりの減額率0.4%が適用される対象者

 令和2年5月29日、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立し、6月5日に公布されました。

 今回の改正は、より多くの人がより長く多様な形で働く社会へと変化する中で、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るため、

  • 短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大
  • 在職中の年金受給の在り方の見直し
  • 受給開始時期の選択肢の拡大
  • 確定拠出年金の加入可能要件の見直し  など

の措置を講ずるとされています。

 このうち、令和4年4月に施行される「受給開始時期の選択肢の拡大」について、厚生労働省では「現在60歳から70歳の間となっている年金の受給開始時期の選択肢を、60歳から75歳の間に拡大する。」として積極的なPRを行っていますが、実は繰上げ減額率を現行の1月当たり0.5%が0.4%に引き下げられる予定であることは、該当する政令の改正がまだ公表されていないことからその詳細はあまりPRされていません。

 今回は「繰上げ受給」の改正点について、記載してみます。

政令に見る0.5%の根拠

 法改正は「繰上げ減額率を1月当たり0.4%に引き下げる」ことを前提に公布されていますが、この減額率は施行令で定められている項目であり、現時点では正式には決まっていません。(おそらく法施行直前に公布されるものと思われます。)

 改正施行令の内容は、以下の条文の「1000分の5」が「1000分の4」に変更されるものと思われます。

国民年金法施行令

(支給の繰上げの際に減ずる額)

第12条 法附則第9条の2第4項(法附則第9条の3第4項において準用する場合を含む。)に規定する政令で定める額は、法第27条(法附則第9条の3第2項においてその例による場合を含む。)の規定(昭和60年改正法附則第17条の規定が適用される場合にあつては、同条第1項の規定)によつて計算した額に減額率1000分の5に当該年金の支給の繰上げを請求した日の属する月から65歳に達する日の属する月の前月までの月数を乗じて得た率をいう。次項において同じ。)を乗じて得た額とする。

2 法附則第9条の2第6項において準用する同条第4項に規定する政令で定める額は、法第44条の規定によつて計算した額に減額率を乗じて得た額とする。

厚生年金保険法施行令

(法附則第13条の4第4項に規定する政令で定める額)

第8条の2の3 法附則第13条の4第4項に規定する政令で定める額は、同条第1項の請求をした日(以下この条及び次条において「請求日」という。)の属する月の前月までの厚生年金保険の被保険者期間(以下この条において「請求日前被保険者期間」という。)を基礎として法第43条第1項の規定によつて計算した額に減額率1000分の5に請求日の属する月から特例支給開始年齢に達する日の属する月の前月までの月数を乗じて得た率(請求日の属する月と特例支給開始年齢に達する日の属する月が同一の場合には、零)をいう。)を乗じて得た額とする。

2 (省略)
3 (省略)

改正後の繰上げ減額率が適用される人とは?

 法改正に伴い、厚生労働省ではHP上で「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました」と各種資料やQ&Aなどを公表をしています。

 この中で「受給開始時期(繰上げ・繰下げ受給制度)の選択肢の拡大について」として次のように公表されています。

【出典】厚生労働省HP「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要

 拡大してみます。


 ここには、小さい文字で、
※繰上げ減額率は令和4年4月1日以降 、60歳に到達する方を対象として、1月あたり0.4%に改正予定。
と書かれています。