DCの自動移換 消えた年金問題第2章の可能性も

 国民年金基金連合会が令和4年(2022年)7月時点で発表した「加入等の状況」によると、企業型確定拠出年金などに加入していた人が退職したにもかかわらず必要な手続きを行わなかったことから「自動移換」された人の累計が110万人を超えました。
 確定拠出年金に加入する人が爆発的に増える中、自動移換されて宙に浮いてしまったDCも増え続けているようなので、今後、私的年金版 消えた年金問題に発展することも想定されます。

そもそも消えた年金問題とは

 平成19年(2007年)、持ち主不明の年金記録(公的年金)が約5,095万件もあることが明らかになりました。
 この記録は、平成9年(1997年)までそれぞれの公的年金制度ごとに異なる番号で管理していた年金記録を基礎年金番号に統合した際に、様々な理由により古い番号のままで残っていた記録でした。
 この他、紙台帳等で管理していた年金記録をコンピュータに転記する際に、正確に転記されていないケースなども見つかりました。

確定拠出年金の自動移換とは

 確定拠出年金の自動移換とは、企業型確定拠出年金に加入していた人が退職などで加入資格を失った場合に、一定期間内(加入者資格を喪失した翌月から起算して6か月以内)に他の確定拠出年金に移換したり、脱退一時金を請求したりしなかった場合に、自動的に国民年金基金連合会に年金資産が移されることです。
 この状態になると、以下のようなデメリットが生じます。

  • 年金資産が現金化されてしまい、運用ができなくなる
  • 老齢給付金を受けるための加入者期間に算入されなくなる
  • 移換や脱退の際に手数料がかかる
  • 一時金で受給する際の退職所得控除額の計算が不利になる

 自動移換になっているかどうかは、国民年金基金連合会から送られてくる通知で確認できます。自動移換から抜け出すには、転職先の企業型確定拠出年金や個人型確定拠出年金(iDeCo)に移換するか、脱退一時金を受け取るかのいずれかの手続きを行う必要があります。

 新たに企業型DCや個人型確定拠出年金(iDeCo)の口座を開設し、基礎年金番号・性別・生年月日・カナ氏名などの本人情報が一致する場合、自動的に新しい口座に移換されることもあります。
 しかし、自動移換は年金資産の無駄になるので、自らが早めに対処することがおすすめです。

加入者資格を喪失した翌月から起算して6か月以内

「加入者資格を喪失した翌月から起算して6か月以内」の具体例は以下の通りです。

確定拠出年金法

第83条(その他の者の個人別管理資産の移換)
1 企業型年金の資産管理機関は、次に掲げる者(当該企業型年金に個人別管理資産がある者に限る。)の個人別管理資産を連合会に移換するものとする。
一 当該企業型年金の企業型年金加入者であった者であって、その個人別管理資産が当該企業型年金加入者の資格を喪失した日が属する月の翌月から起算して6月以内に第54条の4【確定給付企業年金の加入者となった者の個人別管理資産の移換】、第54条の5【企業型年金加入者であった者の個人別管理資産の移換】、第80条【企業型年金加入者となった者の個人別管理資産の移換】若しくは第82条【個人型年金加入者となった者等の個人別管理資産の移換】又は中小企業退職金共済法第31条の3資産管理運用機関等からの移換額の移換等の規定により移換されなかったもの(当該企業型年金の企業型年金運用指図者及び次号に掲げる者を除く。)
二 当該企業型年金が終了した日において当該企業型年金の企業型年金加入者等であった者であって、その個人別管理資産が当該企業型年金が終了した日が属する月の翌月から起算して6月以内に第54条の4、第54条の5、第80条若しくは第82条又は中小企業退職金共済法第31条の3の規定により移換されなかったもの
(以下略)

企業型確定拠出年金資格喪失時のお手続きご案内サイト

 会社を退職したけれど企業型DCの手続きをどうすればよいのかわからない場合、こちらのページから簡単な質問に答えるだけで必要な手続きを確認することができます。

【参考】かんたん!お手続きチェック

 また、国民年金基金連合会が委託した特定運営管理機関が運営する自動移換者専用コールセンターも用意されています。
TEL:03-5958-3736
受付時間:平日9時~17時30分(土・日・祝日・年末年始(12/31~1/3)は利用不可)