そもそも労働者派遣法って何だ?(Q&A)

 労働者派遣は特殊な働き方になるので、法律によって多く規制が定められています。派遣社員を送り出す側の派遣元事業主ももちろんですが、派遣社員を受け入れる事業主にも多くの規制があり、法違反になると想定外のペナルティが科せられることもあります。

 ここでは、労働者派遣法の目的など、「そもそも何なんだ?」ということを記します。

労働者派遣は「特別に許可された制度」

 労働者派遣法は何を目的としていますか

 法律には「派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とする」と定められています。
 この考え方は、派遣労働という働き方や派遣労働者の利用は、原則として臨時的・一時的なものであることが前提になっています。派遣労働者を次々と使い回す常用代替を防止するとともに、派遣労働者のより一層の雇用の安定、キャリアアップを図ることを目的としています。

労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)
(目的)
第1条 この法律は、職業安定法と相まつて労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の保護等を図り、もつて派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とする。

職業安定法
(法律の目的)
第1条 この法律は、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律と相まつて、公共に奉仕する公共職業安定所その他の職業安定機関が関係行政庁又は関係団体の協力を得て職業紹介事業等を行うこと、職業安定機関以外の者の行う職業紹介事業等が労働力の需要供給の適正かつ円滑な調整に果たすべき役割に鑑みその適正な運営を確保すること等により、各人にその有する能力に適合する職業に就く機会を与え、及び産業に必要な労働力を充足し、もつて職業の安定を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。

労働施策総合推進法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)
(目的)
第1条 この法律は、国が、少子高齢化による人口構造の変化等の経済社会情勢の変化に対応して、労働に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、労働者の多様な事情に応じた雇用の安定及び職業生活の充実並びに労働生産性の向上を促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的とする。
2 この法律の運用に当たつては、労働者の職業選択の自由及び事業主の雇用の管理についての自主性を尊重しなければならず、また、職業能力の開発及び向上を図り、職業を通じて自立しようとする労働者の意欲を高め、かつ、労働者の職業を安定させるための事業主の努力を助長するように努めなければならない。

 「中間搾取の排除」とは どのような意味ですか

 労働基準法第6条には、「中間搾取の排除」として次のように定められています。
「何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。」

 要するに「ピンハネの禁止」ということです。
 違反した場合は、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」とされています。これは、労働基準法の中では「強制労働」に次いで重い罰則となっています。

 「何人」(なんぴと)とは、「いかなる人」という意味です。事業主に限定されず、個人や団体、公人・私人を問いません。したがって、公務員であっても違反行為の主体になるということです。(昭和23.3.2基発381号)
 「法律に基いて許される場合の外」とは、具体的には、職業安定法と船員職業安定法に基づく場合を指しています。
 「業として利益を得る」とは、営利を目的として、同種の行為を反復継続することをいいます。したがって、1回の行為であっても、反復継続して利益を得る意思があれば「業として利益を得る」ことになります。主業であっても副業であっても問われません。
 また、「利益」とは、手数料、報償金、金銭以外の財物など名称を問わず、また有形無形も問われません。使用者より利益を得る場合のみに限らず、労働者や第三者より利益を得る場合も含まれます。(昭和23.3.2基発381号)

 労働派者派遣は、この「中間搾取の排除」の例外に位置付けられます。例外措置が適法になされない場合、もはや その例外は認められず、原則に戻って法律が適用されることもあるので十分な注意が必要です。

 「労働者供給」は どのようなスキームになりますか

 労働者供給とは、「供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させること」をいいます。ただし、労働者派遣法に規定する「労働者派遣」は含まないものとされています(職業安定法第4条第7項)。
 したがって、労働者供給における供給元、供給先、供給労働者の三者の関係は、
①供給元と供給される労働者との間に支配従属関係があり、
②供給元と供給先との間において締結された供給契約に基づき供給元が供給先に労働者を供給し、
③供給先は供給契約に基づき労働者を自らの指揮命令(雇用関係を含む)の下に労働に従事させる

または、
①供給元と供給される労働者との間に雇用関係があり、
②供給元と供給先との間において締結された供給契約に基づき供給元が供給先に労働者を供給し、
③供給先は供給契約に基づき労働者を雇用関係の下に労働に従事させる

ということになります。
 なお、労働者供給事業は、職業安定法第44 条、第45 条により、労働組合などが許可を受けて無料で行うものを除き禁止されています。なぜなら、「労働者供給」は、中間搾取の排除(労働基準法第6条)を具体化したものの一つになるからです。

 法律に違反して労働供給事業を行った場合、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する」とされています。これは、職業安定法の中では2番目に重い罰則です。

職業安定法
(労働者供給事業の禁止)
第44条 何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。

(労働者供給事業の許可)
第45条 労働組合等が、厚生労働大臣の許可を受けた場合は、無料の労働者供給事業を行うことができる。

(罰則)
第64条 次の各号のいずれかに該当する者は、これを1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
九 第44条の規定に違反した者 

 「労働者派遣」は どのようなスキームになりますか

 労働者派遣とは、「自己の雇用する労働者を、雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、その他人のために労働に従事させること」をいいます。(労働者派遣法第2条第1号)
 したがって、労働者派遣における派遣元、派遣先、派遣労働者の三者間の関係は、
①派遣元と派遣労働者との間に雇用関係があり、
②派遣元と派遣先との間に労働者派遣契約が締結され、この契約に基づき、派遣元が派遣先に労働者を派遣し、
③派遣先は派遣元から委託された指揮命令の権限に基づき、派遣労働者を指揮命令する

ということになります。この三角形、つまり通常は同一である「雇用関係」と「指揮命令関係」が別々になってしまうことが労働者派遣の最大の特徴になります。
 なお、労働者派遣事業については、労働者派遣法に基づき許可制で行うことになります。「許可」とは、原則として禁止されている行為を、特定の場合(例えば、要件をすべて満たした場合)に「禁止」を解き、特別にその行為をすることが許される行政処分(許可も「行政処分」です)のことです。